森絵都さんの作品はいかがでしょう。
「さらっと読めて、吸い込まれていくような」という表現がピタリと当てはまる作家さんです。
優れた児童文学作品を数多く発表されていましたが、5,6年前から大人向けのものも書かれるようになりました。『いつかパラソルの下で』では直木賞候補に、そして『風に舞い上がるビニールシート』で直木賞受賞されております。
個人的には、このかたの小説は、大人向けのものよりも児童文学のほうが好きなのですが、どれもあたたかいユーモアでつづられていることが作品の特徴です。透明な語り口なのに、冷たい水のようではなく温かな木漏れ日のようなかんじ、と言えばいいのでしょうか。読んだ後に、「ああ、いい話だった」と心から思える作品ばかりです。
『つきのふね』(講談社/角川文庫)、『カラフル』(理論社/文春文庫)は、絶対におすすめです。ぜひ読んでみてください。
また、彼女のユーモアに手っ取り早く触れたいならば、ショートショート短編集『ショート・トリップ』(理論社/集英社文庫)をお試しあれ。
そして森絵都の世界にどっぷり浸りたいなら、『DIVE!』シリーズです。講談社から4巻出ており、文庫版は上下巻で集英社から出ています。「飛び込み」という、スポーツ小説としては珍しい題材を扱っており、彼女ならではユーモアにあふれた、「爽やかなスポ根小説」が楽しめると思います。