私は所謂本の虫ではないので何冊も読むということは無くて、同じ本を何度も繰り返し読みます。逆に言えば何度も繰り返し読む価値があると思う本しか手に取りません。読む度に新たに考えが深まるという本です。最近では講談社学術文庫の「現象学の視線ー分散する理性」という本です。著者は大阪大学学長の鷲田清一氏です。現象学関係では木田元先生の本が解り易いのに比べると、鷲田先生は引用が多過ぎたりして読みづらいのが難点です。著者自身の表現と、引用された本の翻訳の表現とが異なるという事が当然生じますから、やはり引用は程ほどにして頂かないとギクシャクしてしまいますよね。それでも「間主観的世界の生成」という章の「<わたし>の創設」の論は比較的引用が少なく、あっても著者自身の表現と調和が取れている事と、私自身の長年の課題であった独我論の克服・他者経験の本質を明確に論じている事で大変勉強になった箇所です。
もう少し分かり易い本としては木田元先生の(故生松敬三先生との対談形式の共著ですが)「現代哲学の岐路」(講談社学術文庫)という本は本当に何度読んでも考えを深める事が出来る愛読書です。
硬い内容の本ばかりで、質問者さんのお気に入らないかも知れませんが、西洋文化を根本から見直すのに一助となると思いますのでお試し下さると幸いです。
それと、もう一冊、新聞などの書評で高い評価をされているのですが東京大学で教鞭を執っておられる野矢茂樹先生の「哲学の謎」(講談社現代新書)という本は全く引用が無く著者自身の言葉で、時には冗談を交えながら、非常に明快に語っておられる素晴らしい一冊です。
哲学書ばかりですみません。