保険にとりあえず入っておく、という考え方は避けるべきでしょう。保険は『保険事故が発生した際の経済的損失の補填』のために準備するものであって、巷で一般的に言われているような、お守りではありませんし、保険料も安心料と言う類のものではありません。保険会社の宣伝文句に過ぎません。保険に加入することでいかなるリスクに対応しようとするのか、その点を熟慮することが必要です。
金融資産が豊富な方なら経済的損失の補填は自己資金をもってまかなえるわけですから、医療保険に加入する必要性は極めて低いと言えます。不用な保険に加入するのは得策ではありません。
ちなみに、保険事故とは、医療保険なら被保険者の入院や手術、定期保険や終身保険なら被保険者の死亡、年金なら支払期日における被保険者の生存、とお考えください。
支払いの良し悪しは一概にどこの会社が良いとは言えません。巷の噂は、本当に単なる噂です。不払いで名をはせた保険会社でも、迅速に支払われている顧客もいるのが事実です。また、支払い査定能力が低く、査定が不十分で保険金・給付金が支払われているのであれば、それは一部の給付を受けた方のみが不当に利益を得ているに過ぎず、給付を受けなかった多くの方は本来受けられるはずの配当が低くなるという不利益が生じることになる、という側面をお忘れなく。したがって、支払いが早くて文句を言わない保険会社が本当にいい保険会社ではないという論理を見失わないでください。
今後の展望でお話しするのでしたら、資金量と人的資源の豊富な会社の方が有利だといえます。保険会社の支払い関係システムは、保険引き受けや営業支援システムより後回しにされがちです。営業最優先の現われです。ただ、不払い問題を受けて体制を見直す動きが顕著です。不払い決定時の診断書費用の保険会社負担化もその一端です。実際の支払いシステムは、多種多様な商品を扱っている会社ほど、保険期間が長期間に及ぶ商品を扱っている会社ほど複雑になります。加入時期によって、同じような名前の保険でも給付事由は異なる場合があります。これらを迅速・正確に処理するためには、有能な人材の確保と高度なシステム構築が必要となります。国内最王手の生保と旧官営保険会社の提携は、この点の課題に対するひとつの回答と見て取れます。
最後に、保険加入者側が留意しなければいけないことですが、大半の保険には告知義務というものがあります。損害保険の場合はさらに通知義務というものもあります。これを遵守することが何より重要で、故意ではなくても漏れがあると、請求時に告知義務違反とみなされ、もめるもととなります。漏れや誤認に気付いたら、加入後であってもすぐに保険会社に相談するべきです。告知義務違反となるのかよくわからない場合もやはり相談するべきです。なお、保険の勧誘を行っている担当者の意見は参考程度に受け止めてください。支払いに対する権限を有していませんから。